ぽえ犬レビュゥ

にゃあ捜索日記 レポート 上田のぞ美

かなちゃんと私が飼っていたネコ(本名:タナトス、別名:ばなちゃん、通称:にゃあ)がいなくなったのは、2003年12月18日の午前4時頃。
かなちゃんの撮影のために連れてこられたにゃあが、Pちゃんの夜間作業の間に、ぴゅーっとココルームから出て行ったのである。
長くても数時間で戻ってくるはずのにゃあが、帰ってこない。
その日から、ココルームスタッフ総出の捜索活動が開始された。

まず有効なのは缶詰作戦だ。
普段カリカリのエサしかもらっていないにゃあにとって、ジューシーな缶詰はそりゃあもう大好物。これまでも缶詰を叩く音だけで反応して帰ってきたことがあった。ココルームにはネコ用缶詰がないので、シーチキン缶詰を缶切りでカチカチ鳴らしながら、フェスゲ中を歩いてまわった。人気のないキッズランドが怪しいとか、階段の裏とか、くまなく探しまくった。でも、あのにゃあの声は聞こえない。

アイドル的存在だっただけに、にゃあがいなくなったココルームはお通夜のようだ。Eマンはほんまに泣き出すし、Pちゃんはがっくり肩を落としてる。お客さんたちも心配して、にゃあの不在を悲しんでいる。

缶詰作戦でも見つからないので、もうフェスゲの外に行ってしまった可能性があるとして、今度はチラシ作戦に移った。
にゃあの写真、特徴と連絡先を書き込んだものをコピーして、新世界と西成界隈に貼りまくった。
私は北側の通天閣方面担当。年末の寒風吹きすさぶ中、鼻水をすすりあげながら貼ってまわった。電柱に貼ってると、おっちゃんやおばちゃんが「どしたん?」と聞いてくる。「猫がね・・」と言うと、「野良猫のたまり場にいつもエサをやってる人がおるから、言っといたるわ」とか、「うちの飼い猫もな・・」とか、話してかけてくれる。新世界という土地柄かなあ。
ホームレスのおっちゃんに湯たんぽ代わりにされてたらええけど、まさか猫鍋にはされてないよなあ。いくらにゃあがぷくぷくして、おいしそうでも・・。

にゃあの捜索チラシパート2を作るにあたって、似顔絵を描くことになった。スタッフのMが熱心に描いたところ、形は猫だが目元までMそっくり。不思議なことに、誰が描いてもその本人に似ている。いつのまにかココルーム事務所内で、「裏ギャラリーにゃあの似顔絵展」が開催されることになった。

チラシに載せた私の携帯にいたずら電話がかかるようになった年末。1本の電話がかかってきた。西成警察署からだった。「特徴の似ている猫を保護している」とのこと。
私はすぐさま走った。道でぼーっとしてるおっちゃんらに、「に、西成警察署、どこですか?!」って聞きながら。興奮して走り込んだ先にいた猫は。残念。似てるけど違う猫だった。とりあえずそこで届け出をすることにした。ペットの場合、「遺失物届」になるんだって。後から、西成警察署付近は女の子ひとりで歩くところやないと言われたけど、早く着きたい一心で、それどころじゃなかった。

しばらくして1月の半ば、有力目撃情報が届いた。
貼り紙をしてもらってる「喫茶タマイチ」のおばちゃんからの電話。近所の子供がにゃあを見た、と言っている、と。
また走って、目撃者アイコに会いに行った。彼女が見たのは、ビーズの首輪、デブ、写真に似ている、とのこと。まさににゃあそのもの。寒くてふるえていたらしい。かわいそうなにゃあ!

それ以来、ココルームスタッフは毎日朝昼晩、現場近くをうろついている。現場は火事跡の空き地。私がフェンスの前で缶詰めをカチカチ鳴らしてたら、なぜか自殺者とまちがわれた。気持ち悪い人にナンパされることもある。それでも今日もまた、現場へ行く。アイコの証言を信じ、「ばなちゃん!」と呼んだ声に反応した(ように聞こえた)鈴の音を信じて。フェンスにしがみつき、祈るように「にゃあ」を呼ぶ。

アホ丸出しで「みゃあ~」と言いながらトコトコ歩いてたにゃあ。かなちゃんの部屋から出かけようとする私に、ジャンプして抱きついてきたにゃあ。ふわふわのにゃあ。
カムバック、にゃあ。