BOOKS ARCHIVES 声が明日のページをめくってゆく

世界は一冊の本
現代のアラビアンナイト
生きるための言葉を探して
現代文学新人発掘プログラム(非営利事業/作品募集中)

「Books Archives」~物語は語り続けられる~
むかしむかしあるところに、誰も信じられなくなった王様がいました。
王様は妃すら信じられず次々と妃を娶っては、殺してしまうのです。それを見かねた大臣の娘シェラザード姫が自ら王様の元へ出向きました。その夜、姫は、王様におとぎ話を語りはじめます。物語が佳境に入ると「この続きはまた明日」。続きが聞きたくてたまらない王様は、もう一日、姫を生かしておくことにしました。そしてシェラザード姫は、来る夜も来る夜も、王様に物語をきかせ、語ることで生き延び、生き延びるためにまた語りつづけました。アリババと40人の盗賊、シンドバットの冒険、魔法のランプ、まだまだお話はつきることがありません。シェラザード姫は、千と一夜にかけて不思議で面白いお話を聞かせながら、かたくなな王様の心を少しずつとかしていくのでした。

物語はつづいてゆく。
生きるためのことばをさがして。
声が明日のページをめくってゆく。

2004年の春からのBooksArchivesは、いいむろなおき/上田假奈代の「illusions」に端を発する。
忙しい2人は稽古の時間がとれず、上田が「illusions」の朗読を録音した。その音源は、おもしろく、シンプルで、美しかった。このスタイルで連続形式の朗読会を開くことができないか。同時にライヴレコーディングした音源を視覚障害者や多くの人達に楽しんでもらうことはできないか。
はじめ、ある南米文学者の小説が候補にあがったが、版権の問題で諦めざるを得なかった。
しかし、上田が選んだ「吹雪の星の子どもたち」は作者の山口泉さんから快い返事がもらうことができた。
ファンタジーのようであり、哲学書のようでもあるこの不思議な物語を上田は、ずっと愛読していたのだという。
Books Archivesの企画書を発端として、作者の山口泉さんとの間で何度もメールのやりとりがなされた
「著者として、この連続朗読会が一つの協同作業という意味を持つことを願っています」と書かれた山口泉さんからのことばは、もう一度、この企画の意味を問いなおすきっかけとなった。
上田は言った、「生硬でもいい、若い人達の新しい作品を読んでみたい。それが生きることばをさがすことになると思う」と。
企画はいくつかの軌道修正を経た今、新人作家の発掘が目的なのだと、気付くに至った。
Books Archivesはささやかであるが、つづけるには根気と労力がいる企画だ。
現代に語り部がいるとしたら、やはり、生きるためのことばを探していくのだろう。


Books Archivesの主旨

Books Archivesは、ライブレコーディングを同時に実施します。

本事業はnon-profit(非営利)を原則とし、音源をcocoroomの声とことばの資料としてアーカイヴ保存。
視覚障害をお持ちの方などの普段現代文学に触れる機会が少ない方々も気軽にご利用いただけます

Books Archivesは、新人作家発掘と育成を通じて、市民文化へ貢献できることを目標とします

新人作家募集中!問合わせ:cocoroom Books Archives係(06-6636-1662)cocoroom@kanayo-net.com


Books Archives予定作品

「吹雪の星の子どもたち」山口泉著(径書房刊/1984)

吹雪の星で家族や 友達や いろんな年齢や 職業のひととであいながら
差別や 不条理なできごとに遭遇しながら
子どもたちが 目にみえない明日を選びとっていく 物語

物が語られているとき わたしは 目を瞑って
かすかな糸を 手探りしながら 頁を繰っていく
目は 文字を追いかけているけれど
なぞっているのは 語られている物の
向こう側にある世界のありようなのだと 思う (上田假奈代)

若手新人による書き下ろし作品

美術作品、雑誌、日記、静物などの世界を構成するマテリアルの定点リーディング

SECRET NOVEL ~20世紀文学の最高峰~予定作品


日程と詳細はCOCOROOMスケジュールをご覧ください

会場:cocoroom(大阪市・動物園前フェスティバルゲート4階)

入場無料(ただし、ドリンクチケット代として\500必要です)
お問合わせ:06-6636-1662 cocoroom@kanayo-net.com
Cocoroom〒556ー0002大阪市浪速区恵美須東3ー4ー36フェスティバルゲート4F
主催:BOOKS ARCHIVES 実行委員会

●読み手

上田假奈代(www.kanayo-net.com)

 詩業家/こえとことばの革命家
 ※profile
 詩の朗読のCDアルバム、「愛さない」(99年)・「R指定」(02年)・あなたの上にも同じ空が」(03年)などを発表
 特定非営利活動法人・こえとことばとこころの部屋の代表を務める

Won Jiksoo (ウォン・ジクスー)

 現代音楽家/ヴォイスパフォーマー
 ※profile
 1960年大阪西成生まれ 在日韓国人二世、大阪芸術大学舞台芸術学科卒業
 1986年劇団オンシアター自由劇場に研究生として入団
 1992年NYクラブU.S.AでBandH.M.Sデビュー
 以降現代美術作家や舞踏家とのコラボレーションを精力的に展開


Books Archives実行委員会では 寄付をつのっています

本企画にご賛同いただける方の寄付を募っております
寄付専用口座:みずほ銀行 阿倍野橋駅前支店 普通 8075147 ブックスアーカイブス

※活動履歴
2002~ 病院朗読カフェを継続中
2003~ 視覚障害者使節日本ライトハウスにて月2回のワークショップ活動を継続中

参加者のレポート

  • 11月29日(月) ウォン・ジクスー 「快楽通りの悪魔」   勝田真由
    • この日はいつもの舞台にウォンさんが座り、
      お客さんが客席にというスタイルではなく、
      ウォンさんは舞台上のピアノの前に、
      お客さんは舞台に座布団を敷いて
      聴くという形でスタートした。

      ウォンさんはピアノや足のステップや手拍子を交え、
      ときに歌いながら朗読していくが、その表情は伺えない。
      私達に背中を向けて座っているから。

      背中の動きから想像する顔の表情。
      背中から発せられるエネルギー。
      背中で語るひと。

      ウォンさんは朗読者ではなく、パフォーマーなのだと改めて感じた。

      この日の脳裏に残ったのは物語の内容でもピアノなどの音色でもなく
      パフォーマー・ウォンさんの背中そのものだった。

      饒舌な背中を見つめた夜。

  • 2004年11月29日第32夜 ブックスアーカイブ ウォン・ジクス たちばな
    • ウォン・ジクスさんのブックスアーカイブは朗読の合間に演奏が入る。
      他の人に演奏してもらうこともあるが、今日はウォンさんが自らピアノを弾いた。
      それに伴い、聞き手も舞台に上がり座布団に座わった。
      今日のお客は常連の男二人、常連の着物ガールズ一人、よく知らないお客さん四人。
      男三人、女四人です。
      私立探偵バレンチノが娼婦たちに聞き込みをして行く、なかなか犯人に近づけない。
      毎回のことだが今回も「体のどの開坑口でもつかわせる」など女性には厳しい表現があった。
      今日はとても短かかった。切りが良く次回は12章から始まる。
      もし本当に終わるならば、その最終回は、すごいものになりそうだ。
      一見の価値ありと私は思うのでした。

      特報 ウォン・ジクスさん読む「快楽通りの悪魔 五人の娼婦殺人事件」(新潮文庫)年内終了か?
      (その時にはブラスを使い派手に盛り上げるとのこと) 決定ではないらしいが、まだ小説の半分ちょっとしか読んでいないのだが、他の作品も読みたいとのことで、年内に、この小説を終らせたいと、11月29日のブックスアーカイブでウォンさんが言いました。
  • 10月18日(月)「吹雪の星の子どもたち」 山本むつみ
    • 豊かな経験と深い愛から紡がれるゴルノザ先生のことばに
      子どもたちはこれから始まる旅に恐れと憧憬を抱く

      皆がそう思っていた
      旅はこれからはじまる

      この星に生を受けた子どもたちは皆
      旅だたねばならない

      あの夜空の向こう 
      4億8000万ビルドの彼方への旅は
      自分の分身と出会う為の
      夢と希望の道
      厳しい苦難の道
      もちろん命の保障はない

      無事もどることができるのか
      太古の昔から小惑星のまわりを回り続ける
      氷のルビーの仲間入りをするのか

      これから始まる旅への想いは複雑

      ひろばに集まった子ども達の想いをよそに
      旅が既に始まっている事を示す現実
      それはこの旅の厳しさをあからさまに見せつける現実

      誰もいやなものは見たくない
      そんなことなかったことにしたい
      そこから逃げるのか
      そこに立ち向かうのか

      既に始まっていたその旅の行程の中で
      子ども達は最初の決断を迫られる事になった


      時間は自分の思い通りにはながれない
      流れてゆく時間を自分が受け止めるしかないのよ
      目の前の事実に奇跡を起こすのは人々の熱い想い
      最善を尽くそう この一瞬ギリギリまで生きよう

      わたしもあなたも旅の途中
      あすから始まる旅はないのだから

  • 10/4(月) 「吹雪の星の子どもたち」 朗読/上田假奈代
    • この日のブックスアーカイブスを、私はいつもとは少し違う心境で迎えた。
      ココルームの壁面にはchims参加の私の作品が展示されている。
      その中での朗読を何ヶ月も前から想像しながら、私は耳を傾けていた。
      こんな形がいいかしら?あんな色がいいかしら?と時折、脱線しながら。
      毎週のように空間を感じられることは、至福のときであった。

      この日の朗読は第16章《黄金のいのちの繭雲たち》と
      第17章生きること、隙間をくぐりぬけること。

      繭雲-なんていう巡りあわせなんだろうと思う。
      私の作品は繭からできる真綿という繊維を使った作品で、
      いろんな形態の小さなパーツが点在する。
      文中にはサンゴ・貝・植物などの単語が登場して、
      我ながらリンクするなぁと感じた。

      まるで繭でできた雲がココルームの壁面を漂っているかのよう。

      この出会いに感謝したいと思う。
  • 10/12(火) 「快楽通りの悪魔」 朗読/ウォン・ジスクー
    • 假奈代さんとウォンさんの朗読は、私の中で自然と異なる位置づけになってきた。
      假奈代さんの朗読は自分の内面を辿るような感じであり、ウォンさんの朗読は
      ウォンさんと毎回違うアーティストとの共演を楽しみ、観察するような趣である。

      今回はハーモニカ奏者とのコラボレーションでこう言ってはなんだが
      非常に観察しがいのある共演だった。

      ココルームの壁面はこの日から展示替えで、MORIKAWAさんの「JAPAN」と題された
      赤・白・黒色を使ったインパクトのある作品であった。

      ハーモニカの澄んだ音色が響く。
      ウォンさんの背後に位置し、ウォンさんとの呼吸をはかる。

      何回かこの「快楽通りの悪魔」をお聴きして思うのは、コラボレーションするスタイ
      ルも
      アーティストによって様々だなぁということ。
      自然体で空間に、空気に溶け込みながら、そのタイミングを待つ人もいるが、
      このハーモニカ奏者さんは今か今かとタイミングを探っていた。
      いくつかのハーモニカを手に取りながら。

      緊張感のある雰囲気に私もドキドキして、集中していた。
      この日の朗読は感情の激しい表現が多く見られ、音ともマッチ。

      即興って、技術や経験もさることながら、瞬発力が大事だなぁと思う。
      突然やってくるタイミングを待って、そして一気にスタートダッシュ。

      そんなことを思いながら、ふと気がついたのはハーモニカ奏者さんのファッション。
      黒のシャツ、白のパンツ、赤い靴。
      あっ!MORIOKAさんの作品とリンクしている!
      これは偶然なのだろうか?

      渋い雰囲気と音にノックアウト!

      そして、毎回、素敵な共演者をお連れになるウォンさんもまた、
      魅力的なアーティストだと改めて感じた夜であった。
  • 9月21日(火)吹雪の星の子どもたち   山本むつみ
    • とうとうその時がやってきた
      未だ見ぬ自分の体外脳と出会う時

      夜と金魚藻の匂いに満ちたしめった空気の中
      チエーロたち3人も意識不明の重病のスーオンと共に
      その泥沢にたどりついた


      このたくさんの黄金色に輝くおびただしい数のガス体の中に
      自分たちの分身もいるんだ
      とおい宇宙のかなた 4億8千ビルドのかなたから
      自分と出会う為に旅をしてきた体外脳


      ようやく探し求めたゴルノザ先生や軍長さんは はるかかなた
      あそこまでたどりつかなかれば・・・

      スーオンの容態が気にかかる

      ココロが緊迫する はじめてのコトが多すぎる夜
      だれもがみんな 期待と不安をかかえている
      知る前にはどんなに思いあぐねても予測だに出来なかったことを
      目の前の現実として現れた瞬間にいともたやすく理解する


      生きていると よいこともわるいことも 楽しいことも哀しいことも
      おもしろいこともつまらないことも 忙しいことも退屈なことも
      盛りだくさんに押し寄せてくる
      それらの連なりで日々時間が埋め尽くされる
      この特別な日もその中の1日にすぎない


      興奮と安堵の中 初めての自分と出会う日

  • 9月13日 快楽通りの悪魔 三夜目 山本むつみ
    • 彼にとって その西行きの路面電車に乗るコトは
      何を意味したのだろう

      いいおとななら 充分わかっていたはずよね


      ヒトのからだはうまくできているわ
      どんなに楽しい出来事も つらい出来事も 
      容赦なく日々の営みの中で都合よく風化されてゆくの
      すべては向こう岸に押し流されてゆくかにみえる

      でもね 場所が憶えている過去ってあるのね
      その場所に戻ったが為に・・・

      そのキョウレツな磁場は一瞬にヒトを引きずり込む
      何年も何十年も飛び越えて 想いはリンクしてしまう
      泣くに泣けない 笑うに笑えない 
      自分自身の過去に引きずりまわされるのもヒト

      場所は連綿と続くヒトの営みを見守りつつ
      そのパワーを吸収してゆくの
      彼が訪れた街もそのヒトのパワーで生き続けている 今も


      幼なじみの友人の軌跡をなぞるコトは
      自分の生を生き直すコト

      雨は上がった 
      そしてすっかり 夜になってしまったというコトは
      今日の続きの明日が来る



      明日 その医者に会いに行くのね
      大切な幼なじみを理解する為に 

      本当は気づいているんじゃないの? 


      好奇心の代償はあまりに大きい

  • 8月30日(月)吹雪の星の子どもたち    山本むつみ
    • 台風が来てるらしいのに穏やかな雨ふり
      今年の月曜日は嵐が多い


      さて 赤い息のチオマがとうとう語りだした
      大人たちが無責任に彼女に貼ったレッテルが
      1枚ずつはがれてゆく

      チオマのことばは簡潔で力強い

      どんなに大声をだそうとも大人という立場を利用しようとも
      憶測から紡ぎだされたことばではたち打ちできやしない

      父を思い 友だちを思い 森を思う

      森の動物たちと会話し1ピルドを2~3分で走るコトのできる
      彼女の真実
      彼女の名前には何が隠されているの

      トラブル続きの儀式の夜 時間が刻々と過ぎてゆく
      まだまだお話はまとまらないけれど
      とうとう 旅立ちのその時刻が迫ってきた


      来る時とは打って変わった帰り道のお天気は 激しい暴風雨
      傘もまともにさせない  
      くっくっ と笑いがこみ上げる
      チオマちゃんも言ってたよね 火事が好きだって 嵐が好きだって

      わたしは それに迷子になることも好きかもしれない

  • 8月23日(月)快楽通りの悪魔 二夜目 山本むつみ
    • 二人目の娼婦が殺された

      凶器は腰ひも
      現場の娼館に残されたのは
      場違いな上等そうな紫のドレスと
      黒い薔薇

       きまぐれにはじめたジグソーパズルは
       わたしには難易度高く散らかったまま
       できあがりの大きささえ予測がつかない
       
      第一発見者はちょっぴり個性的なカメラマン
      精神病院に送られた神父は
      はたして謎を解く鍵になるのだろうか?

       落ち着いて 落ち着いて
       冷静に色や図柄や形を観察すれば
       となり合わせのピースがみつかるはずよ


      1900年初頭のニューオリンズ
      複雑な人種差別や貧富の差 矛盾だらけの混沌としたこの街では 
      人々のパワーがJAZZ等の音楽として絢爛に開花した時代

      矛盾のあるところにはパワーが集結し
      力強いアートを生み出してゆく

       うふふっ
       何かが起きるとわかるのよね
       あなたがどういう思考回路をもっているのか
       普段は見えない人間模様がヴェールを剥がすように
       浮き彫りになってゆくわ
       いったい何があったというの?

      目に見えるものは 耳に聞こえるものは 氷山の一角
      ものゴトはそんなに簡単じゃない

       ちりばめられた各ピースは いったいいつになったら
       1枚の絵に仕上がるのだろう 途方にくれるよ


      先行きの見えない不安がよぎる

  • 7月5日 ブックスアーカイブス レポート 勝田真由
    • 「吹雪の星の子どもたち」 
      第10章 世界に刻印しうる記憶の総量について

      小5の男の子であるチエーロの胸の内を延々と語る第10章。
      かなよさんは「ひたすら胸の内を語るけど大丈夫?」と聴き手を心配されていたけれど、
      私にとっては魅力的なことばの宝庫でおもしろかった。

      「自分の肉体とは『世界』の果樹園で刻々、熟成しつつある堅い果物であり」

      「結晶化した『時間』・・・いわば時間の化石、時間の琥珀、時間の蜜蝋のような物質に励まされ、支えられて-なんとか明日も、明後日も、生きてゆくことができるのではないかという、朧ろげな希望でした」

      チエーロの胸の内は振り子のように振れ続ける。
      その振り子は不規則で、ある場所で小刻みに震える、または行ったり来たりする。
      ときに大きく振れたり、しばらく振り切ったままだったり・・・

      それを聴くわたしの振り子は、ときに物語の場外へ飛び出す。
      イマジネーションが働いて、制作する作品のイメージが突如、繰り広げられたりする。
      そのとき、物語はわたしの周囲を浮遊しているようで、それがなんとも心地よい。
      浮き輪でプカプカ浮いているような感覚かな。

      休憩をはさんだ後のかなよさんは、さらに集中力を増す。
      艶やかな声がココルームに響き渡る。

  • 7月20日(火)山本むつみ
    • 今日も暑かった 
      毎日うだるような暑さが続いている 朝も昼も夜も
      気持ちも身体もすべてがとけてゆく
      今また けだるく物憂い長い一日が終わろうとしている

      この現実を嘲笑するかのように
      「吹雪の星の子どもたち」の現場では引き続いて
      緊迫した空気が流れている

      ひとりの少女に向けられる大人たちの視線 
      状況を見守る子どもたちの視線

      未知の事柄に出くわした時
      大人たちは過去の経験や社会のルールで判断をするのね
      よくわからないなら黙っていればよいものを
      よくわからないからこそなのか
      洗いざらいつじつまを合わせようとする

      よってたかって少女を囲む

      人生のこんな大切な1日に
      刻々と流れる時間をこんなコトに使っている

      大人たちは口をそろえて言うのだろうね
      「だから そこが大切なんだ」って

      これも真実 あれも真実
      ひとのココロはモザイク模様

      ああ精一杯生きている少女が美しい

      大人たちの好奇の視線は彼女の美しさを
      際立たせるのにあまりある

      そうそう cocoroomに来る時見たのだけれど
      西の空を染めた今日の夕焼けは本当にきれいだったの
      久しぶりに自然に出会ったかのようなオドロキと感動があったわ
      いろんなコト そのまま受け止められたらいいのにね
      大人ってメンドーね

  • 6月21日「吹雪の星の子どもたち」山本むつみ
    • 薄暗いあかりの中で朗読を聴く
      ライトを浴びた語り手がうごく 陰影がうごく

      変幻する声を耳にしながら
      彼女の動きを目で追いかける

      集中している語り手は美しい
      そこに彼女はいる
      ここに見とれているわたしがいる


      物語は遠い星での出来事で
      その星での子どもたちのたいせつな儀式の日

      こうゆう時 その時間をぶちこわすのはいつも 
      ひとの良い数人の鈍感なおとなたち

      どうしてこうも
      学校や親に教えてもらったコトは実社会には
      あり得ないのかしら
      つじつまがあわなくても 声が大きければ通ってしまう現実

      星がちがっても同じなのねぇ


      季節はずれの台風が通り過ぎたあとに流れる静かな時間

      今日はドラマ続きの1日だった

  • 6月28日「僕の恋、僕の傘」山本むつみ
    • その恋の物語はビールとサンドウィッチではじまって
      同じくパブで締めくくり

      残酷な女とロマンチストの僕との恋の物語

      たぶんもっと以前にこのお話に出会っていたなら
      わたしはそう解釈しただろうな

      でも 現実の 今ココにいるわたしには それは
      前を見る女と自分勝手な僕との恋の物語

      やりなおしができると考える僕
      切れた糸はつむげない女


      いつもどこかで微妙にすれちがっちゃうんだよね
      男と女

      ときどき男性は女性の残酷さを口にするけど
      男と女はどっちもどっち

      雨の中で暮らすアイルランドの僕には
      恋も傘と同等の必需品 


      ほらほら「僕」って「女」には残酷だと感じるわ

      さてさて彼はなぜふられたのか理解しているのかしらん?
      ちょっと気にかかる

  • ココルームの方舟に乗って  梶谷友美
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/3102/index.htm
    • こんにちは。月曜日(5/12)にココルームでの朗読会におじゃまさせて戴きました梶谷です。(高石さんの連れです)あの時は、ありがとうございました。感想、遅くなってしまいましたが送ります。

      本の内容、会場の雰囲気、声、假奈代さんのオーラ。全てが組み合わさって不思議な空間が作り出されていました。
      外界から隔絶されて、まるで、宙に浮いた船の乗客になったような感じでした。
      (私はぼんやりと、「今頃外は核戦争で滅亡してて、この部屋だけが何も知らずに無事に残っている」という想像をしてしまいました)

      それにしても、本を自分で読んで内容に入り込むのと、誰かの声で読んでもらってその世界に入り込むのは全く違う体験ですね。「大人になって、本を読み聞かせてもらうことのしあわせ」を感じました。

      ”吹雪の星のこどもたち”の世界が、頭の片隅でまだずっと続いていてちょっと困っています(笑)
      次も必ず行こうと思いました。

  • BOOKS ARCHIVES   「ライトハウス職員の井野です」 井野知子
    • 上田假奈代さんが「声とコトバのWS」をしている視覚障害者の福祉法人日本ライトハウスの職員の井野です。
      WSにはWon Jiksoo さんも参加されました。私は施設利用者のコミュニティと假奈代さんはじめアーティスト・ボランティアの交流関係を今後も大事にしたいと思っています。そして毎回のWSは作品として、コミュニティとアーティストの共同作業となっています。さて、假奈代さんとWonさんがBOOKS ARCHIVES を始める事を知りました。しかもノ「音源をCOCOROOMの声とことばの資料としてアーカイブ保存。視覚障害をお持ちの方などの普段現代文学に触れる機会が少ない方々も気軽にご利用いただけます」と書かれてあります。ライトハウスでは「ボランティア友の会」の方々が朗読録音をしてくれています。私は今回の假奈代さんとWonさんの朗読の世界に是非とも参加したいと思いました。そしてそれが毎回の参加となりました。假奈代さんが読むのは、山口泉著「吹雪の星の子どもたち」です。聞いている自分の心の中に、假奈代さんの話す言葉の一つ一つが地球ではない違う星の世界を創っていきます。その星にいる5年生のチエーロ。彼の生きる呼吸に私は引き込まれてしまいました。聞いている私はチエ?ロと一緒に呼吸しているのです。これからも、假奈代さんの声でチエーロに会う時間が楽しみです。まるで舞台を聞くようなWonさんの朗読。新人作家の松井美也子著「うつつつ」と伊集院静著「えくぼ」を読みました。Wonさんの朗読のイメージは『身体の中から物語が飛び出して来る』という感じです。むかしむかしの話ですが、私は日下丈史のラジオの朗読番組を待っていた者です。Wonさんもそれに共通します。また次回も聞くぞ!と思います。「BOOKS ARCHIVES」の始まる時間は20時半です。始めは遅いなあ!と思いました。でも月曜日の仕事帰りCOCOROOMのまかない定食を食べながら本を読んでいると、「そろそろ時間ですよ!」となります。これからも二人の朗読の世界を楽しみたい自分です。そしてそれは録音されます。視覚障害の方々も触れる機会が増えた事ですね。うれしいです。

  • 6/7ブックスアーカイブス第九夜 勝田真由
    • 朝、きれいに晴れていたと思いきや、夕方には雨が降るという、梅雨らしい忙しいお天気の中、第九夜は始まりました。
      本格的な夏の到来を予感させるように蒸し暑く、私は少し落ち着かない気分で、せわしなく席につきました。

      「時間の秤が傾きをとめ、永遠に釣りあったり、かすかにいつまでもうろえているような、世界じゅうから音という音が揮発しさって、
      あとにはただ、伸びたり縮んだりするゆるやかな仄明かりの環のみが、眼にみえるかみえないかの速度で波打ち、
      あたりにひろがってゆくだけになったかのような・・・」とこんなふうにこの「吹雪の中の子どもたち」は一つの文がとても長いのです。
      次々と展開されることばは詩のように、突然、こちらの予想をふいに裏切られるような感じがします。
      一言、一言を耳で追っていると、どんどん置いていかれる感覚になると同時に、なぜか妙に心地良かったりもします。

      時間の秤ということばが印象的です。
      時間を秤に乗せることができるとしたら、何のために使うだろう?
      どんな時間とどんな時間を乗せるだろう?
      釣り合うのか、釣り合わないのか、想像は膨らんでいきます。

      思い返してみれば、朗読を聞くという体験は、ありそうでほとんどなかったと思います。
      このブックスアーカイブスに何回か参加して、その帰り道はなんとなく晴れやかな気分で帰っています。
      考えてみればそれは当然かもしれません。
      幼い頃、毎日、眠る前に両親が絵本の読み聞かせをしてくれたのを思い出します。
      そんな感覚を追体験しているのでしょうね。

  • 04’05’31 「サラードによせて」山本むつみ
    • ライブで朗読を聴くというのはなかなかスリリングなものだ
      ウヲンさんは今日もそこに居合わせたひとを別世界へといざなう

      「においを感じて欲しい」と言ってはじめられたその日の朗読は
      広大なアラブの自然やそこに生きる人々の息吹
      肌にあたる熱い空気までをも感じさせた

      ウヲンさんの口から発せられることばは能動的に私に働きかける
      ことばに誘発されて 私の中の記憶がいっせいに反応する
      いつか見たアラブの写真 毎日報道される暗いニュース
      ことばが五感を刺激する

      ここに来るたびに ことばの持つちからというものを考えてしまう
      口から発せられることばには書き文字にはない緊張感がある
      そこにはライブ会場に居合わせた人だけが共有するコトのできるリアルな情況がある

  • 5月24日(月) 第七夜 「吹雪の星の子どもたち」 山口泉 <4> 
    第五章「もう一組の子供たち」 第六章「小さな争乱」 上田假奈代
    • 月曜日の20:30、照明が落とされ、ほのかな明かりの中で、
      静かに始まっていくブックスアーカイブス。

      次々と、まるで流れ星が流れていくように假奈代さんの声が私の身体の中を駆け抜
      けていく。一瞬、「あっ、この言葉すてきやなぁ・・・」とか「あっ、このフレーズいいな・・・」と感じる。
      でも、すーっと流れていって、また違う言葉が入ってきては流れていく。

      假奈代さんの声は包み込むように柔らかいのに、
      強いというのか、芯の強さを感じる。
      それは假奈代さんの生きる姿勢そのものなんやね、きっと。

      「泥曜日」「水晶音楽」「体内脳」「星外脳」「白熊交通互助組合」・・・
      不思議な単語が次から次へと登場してくる。
      一つ一つの言葉に想いを巡らせているうちに、物語に置いて行かれてしまう。

      だから正直な所、物語の流れを改めて言葉にしようとすると、
      少したじろいでしまうけれど、何とも言えない心地よさがクセになりそうだ。

      それはたぶん、私だけでなく、他のお客さんの様子を見ていても伝わってくる。
      気持ちよさのあまり、しばしウトウトしてしまったり、休憩をはさんで再開するときに席を替えてみたり、それぞれにこの時間を味わおうとしているように思える。

      ドリンク片手に1時間半という時間、月曜日だからこそ、
      多くの人に立ち会ってもらいたいような気がする。
      新たに始まったそれぞれの1週間を生き抜くために。

      「吹雪の星の子どもたち」という、たった一晩の、けれど、
      壮大な物語が、一夜、一夜、静かに語られていく。
      新世界のほとりのココルームで紡がれつつある、一本の糸。

  • 5月24日(月) 高石 聡
    • 爽やかな風。熱い日差し。久々に晴れの BOOKS ARCHIVES。
      はじまる前、弦楽三重奏の BGM で心を鎮める。今日はスーツ姿度が高い。東京からのかたもおられるらしくて、ついに中央テーブルにも人が。

      第五章。假奈代さん、張りのある声ではじめる。
      親が村外で働いている子どもたちばかりの隣組。村内で生計をたてているチエーロたちの組とはほとんど交流がない。中でもパリートは、親が上級役人で、ちょっといやな子ども。級長会議での出来事。
      そう、まだゴルノザ先生の話が続いているのだった。パラムシル翼状散開星団と、ウスチネッラ櫛形変光星団との中間にあるという、その《星外脳》とは?
      突然、遅れてきた子を、大声であげつらう婦人と巡査長。交わす言葉はますます昂ぶる。少女も負けていない。眉間に皺を寄せる假奈代さん。眉を上下に、額に皺を浮かべ、生命を吹き込み迸る。根付の鈴の音。
      あぁ、チオマが! 第一章での束の間の邂逅以来、久し振りに。

      サラリーマン仕様のあいさつをされて、一息つく假奈代さんは、あでやかに疲れ前髪を両手でかきあげる。お疲れさま、と心で呟く。

  • 5月17日(月) 高石 聡
    • 午前中が雨、午後もちらほら降る日。
      このフェスティバルゲートの入口で、ウォンさんにばったり。
      4F に上がると、みなさん刷り上がったばかりの “ぽえ犬通信” を折り折りしてる。まかないを早々に済ませ、私も折り折り。黒いインクの擦れた指に、多少なりとも罪滅ぼしになってればいいな、と思う。

      今日は、村上春樹著『神の子どもたちはみな踊る』、の中から『UFOが釧路に降りる』を。
      小ぶりなトランペットの音色。
      妻がまる五日間、震災の映像を観続け、そして出ていってしまう。休暇を取ろうとした小村は、同僚の佐々木から、釧路への届け物を依頼される。空港で出迎える佐々木の妹とその友人。交わす言葉。UFO の話。熊の話。
      唐突な終わり。トランペットのリードだけ? で漂うエンディング。最初はコホコホしていたウォンさん、なんとか戻してひといきに。

      不思議なことは、作品によって、ウォンさんのイメージががらっと変わってしまうこと。
      そして、今回は既読の作品だったのだけれど、以前自分で読んだときより、身体的に、まるで粘土を練り付けてかたちづくったかのように実体化して感じられたこと。
      例えば、釧路行きを請う佐々木の、微妙な引っ掛かりを感じる厭わしさ。拡大されるイメージ。

      「フェスティバルホールを一杯にして、朗読したい」とおっしゃるウォンさんの声を聞きつつ、ぼぉっとしてるとすんごいいがんでるぽえ犬通信を慌てて折り直したり。

  • 5月10日(月) 高石 聡
    • GW を間に挟んで、そして久し振りの假奈代さん朗読の日。朝は雨で、半端に蒸し蒸し。でもまかないの豆御飯は瑞々しく爽やかな香りが広がった。

      シャック三原さんの描いたたくさんの似顔絵に囲まれながら、今回も時間ちょうどに始まる。一カ月近く間が空いているせいもあってか、丁寧にあらすじをなぞる。よみがえる吹雪の星、そして広場の喧騒。
      第四章。ゴルノザ先生が、旅だちの前の説明を子どもたちの前ではじめる。のだがちんちくりんな先生、忍び笑いに迎えられ、掛け合いをしつつ、でも先生にまつわるエピソードと、秘密めいたチエーロの回想がいくつかはさまり、…‘パラムシル翼状散開星団’? ‘ウスチネッラ櫛形変光星団’?? 《星外脳》と《体内脳》の関係???
      疑問符で埋め尽くされたまま唐突に終わってしまった頭に、假奈代さんが次回、次々回に出てくる話のさわりを少しだけヒントに。吹雪の星、宇宙空間的にエライところに位置してるらしい…。
      今宵、急に風向きが変わっていきなり SF チックになってしまう。まさかこんな方向へ展開してしまうとは。
      混乱しつつ、乞う次回。

  • 04.4.26.(mon)
    第4回 ブックス・アーカイブス 所見レポート(少々個人的な) 蕾まりこ
    • 晴れ そして蒸し暑い (梅雨のような、4月やのに)

      ココルーム舞台にはこいのぼりが昇っていて、近年おひなさまもこいのぼりも出さず、見過ごし見逃しているなあ、と思う。こいのぼりってこんなにたくさんの曲線や色や半月形とかでできてるんやなあ。開演少し前。

      ウォンさんのハーモニカ  6人が聴いている(後ほど1人来られる)

      本日のテキストは
      伊集院静(大酒のみで確か昨年アイドルの挿絵で本を出版、夏目雅子の元旦那様)作
      「えくぼ」

      ウォンさん(今日はTシャツにGパン)を始めて拝見した。目が力強い、とても。

      小説の朗読を生で聞くのは初めて。私はいらち(関西弁やわ、これは)なのか、本を読むときは言葉を一つ一つ丁寧に読みくだすよりも、躍起になってストーリーを追うことが多いので、頭の中にはっきりとした絵を思い浮かべない(浮かべたいけど)。しかし、全ての、隅々の言葉を耳から聞くと、目で追うより情景がよく浮かぶ。作者が何気なく使っているような言葉が、何かの暗示であったり、登場人物のかすかな思いを表していたりするのだな、実は。

      「今回は短編を」ということだったが、朗読すると1時間強。これだけの時間を一人で、お客さんを集中させるのは大変なことだと思うが、ウォンさんの熱い朗読は引き付け続けられるものがあった。

      「昭和から平成にすんなり入ってしまった、昭和という時代に一度決着をつけなければいけないのではないか」というウォンさんの考えで、今回は昭和の匂いを感じさせる「えくぼ」をテキストに選ばれた。(「えくぼ」は今回の朗読CDをcocoroomで借りて聴いて見てください、面白いです、ウォンさんの声が非常にイイです、ぜひぜひ!!)
      朗読終了後、昭和、という時代について意見し合うこととなったが、これは年齢によっても、当時のそれぞれの環境によっても昭和の捕らえ方が違うのであろう。
      私の個人的な意見としては、昭和は濃く色づいている感がある。それは多くの事が起こり変化した時代だからでもあろうし、人々が強く意思を持っていたような気がするからだ(気がするだけです、勝手な思い込みですかね)私は主に平成を生きることになるのだろうが、時代が色づき形づいていくのはこれからである。日本という国としては不安材料が多いが。

      地味だけど面白かった。
      人間の声の変化や、響きや、言葉のもつパワーを実感できた。

      次回が楽しみ。

  • 4月26日(月) 高石 聡
    • 今週もウォンさんの日。「今日は、泣かせるでー!」との雄叫びをきいたのは、まかないのカレー(トマトの酸味が効いてて、他にも色んなスパイスが入ってるみたいで、美味い)+サラダ(いつも思うんだけど、cocoroom の野菜は生きてる味がする)を頂いているときだった。
      …気合い、入ってる。うん。

      今日のステージは、立って動き回れる仕様にマイクがセットされていて、上手、下手、奥から話者を目がけているマイクもある。
      が、今回の作品は座って読むことに。
      ウォンさん、体内にはカレーとアルコールに、”ROCK” な赤いTシャツにはザリガニが鎌を振り上げてる絵、ステージ背後には人ふたり分くらいありそうなこいのぼりの鯉が、見つめている。
      シュールだ。。

      ハーモニカが序曲を奏でる。先週とは打って変わる、そんな予感。
      一呼吸おいて、朗読を始める。作品は、伊集院静の『えくぼ』。

      女坂、をのぼる初老の女性。独り言、僻み、…拗けた心。
      68歳という年齢は、”おばさん” と “おばあさん” の、どっちつかずな道程なんだと思う。”更年期障害” なんてことばは、その実体に比して冷たすぎる。そして、表面だけの、ぺらぺらすぎる。
      ゴッホの “ひまわり” は、その強さでなく明るさでもってまわりを照らしていく。
      自分が大家である集合住宅の、最上階の一室で、まどろむ。精神科医の処方した薬で。医者は訊く。
      「これまでの人生で、気になっていることはありませんか」
      気になっていること?
      ヤンキースの松井選手。その笑顔が、孫に、あまりにも似ていたのだった。

      ハーモニカの interlude は、バンドネオンのような哀愁をただよわせる。風になびく。どこに運ばれていくのだろう。

      息子、孫。子を授かる重みは因襲に搦めとられ、不慮の出来事は影を落とす。運、命。
      松井の活躍と体調との相関が可笑しい。でも、あるよなぁ、こういうことって。

      御参りは、過去と現在との祈りの巡り合い。
      そしてふとしたきっかけで、タイトルは、瞬く間に、電光石火に、それらを綴り合わせ結び付ける。その光は未来をも照らす。

      ハーモニカは明らかに一陣の風となって吹き渦巻く。砂漠の風紋を思う。

      休憩なしで一気に読み通してしまうウォンさん。音声は、なんとか無事にパソコンにも取り込めた模様。
      “昭和” のイメージがする作品、とのウォンさんの一言は、戦争がもしなかったらの “昭和”、そして “昭和” の女とよく言われるという假奈代さんへ。
      やっぱりとても身体的で演劇的なウォンさんの朗読の、今日はしっとりモードなパワーを感じながら、松井の打撃フォームを心に浮かべた。

      cocoroom を後にすると、雨の空気に取り巻かれた。

  • 4月19日(月) 高石 聡
    • 今日は初めてのウォンさん朗読の日だ。朝から雨。日が暮れて、さらに激しくなる。
      マイク、今回はステージ上にセッティングされている。本数は例の如く10本弱。
      大テーブルで、束の原稿用紙を手に、真剣に下読みされているウォンさん。
      少しずつ人が集まりはじめる。第三夜、すでに常連さんとなりつつある方々。いつもと同じような席に、思い思いに。そして初めての方々。假奈代さんも今日は客席側へ。

      マイクテスト、「本日は晴天、ではありませんが」、あれこれ喋ってみるウォンさんは、ちょっと精悍な役者さん風に、てきぱきとした身ぶり手ぶり、そして鍛えられた太
      めの良い声をされてて、格闘系、というかカンフーの人みたいだ。しかしもちろん「アチョー!」とは言わない。そんな会ではない。
      假奈代さんが改めてこの企画の趣旨、そしてウォンさんの紹介を少しされて。
      さっそく、ウォンさんが朗読をはじめる。作品は、『うつつつ』。

      最初は、なんだかへんてこりんで、でも淡々とした情景描写。ウォンさんの朗読、やはり筋肉質で、いくつかの声色をはさみ、本物の俳優さんのようだ。目を
      瞑る。やっぱり、開ける。その佇まい、所作がイメージを喚起させる。

      短めの休憩。その間に、遅れておみえの方に向けて軽く要約するウォンさん。「ママが死んだ若い女性とおじいさんの話、実はそのおじいさんはオブジェ
      で、、、。」

      そして、後半へ。
      物語は時空をねじまげていく。が、時おり入る客観な目線に、何度も笑いをこらえる。人、ではないおじいさんを抱えた、前も後ろもカエルの絵のシャツを着た
      妙齢の女性。。経緯は突然で二転三転する。あやしくもおかしい。

      一息に読み終えると、しばし歓談に。客席でチューハイを飲みながら「動きながら読みたい!」とウォンさん。やはり。PAのイイジマさんが、マイク10本を両手と
      背中に担ぎ、暴れるウォンさんを追い駆けるの図を想像してしまう。
      お客さんともっと近くで車座になってやりたい、とか、枕の用意要りますか、とか。次回はアイマスクを用意します、とウォンさん。…あやしげな秘密クラブ
      みたいである。飛び込みでお越しの方、そおっと見なかったふりして帰りはしないだろうか。

      参加者の中から、ちょっと相談が、、と声があがる。目の不自由な方対象のワークショップをはじめられたかた、その方法についてみんなで知恵をだしあったり。

      で、来週は、ほんとに “How To Sex” なのか、清原の野球物語なのか、イスはあるのか寝っころが詩状態なのか、ナゾにつつまれ夜は更ける。

      こうしてBOOKS AHCHIVESは、一夜一場、変化しつづけ積もっていく。

  • 4月12日(月) 高石 聡
    • 第二夜。
      やはり、マイクによってたかって囲まれている。あやしい。ちょっと鼻声な假奈代さん。
      御挨拶をされつつ、さっそく、第二章。

      少年チエーロは家に着く。夕暮れに、電気の消えた軒先。普段と違う、不穏な静けさ。
      一歩踏み込むと、暗闇に蹲っている弟。
      母と父、それは荘厳な、旅だちの夜。
      一言一言が、心情を波紋のように広げていく。

      録音の都合もあり、20分程度ごとに休憩をはさむ。

      初めておみえの方のために、改めてこの趣旨と、先週のあらすじをなぞる。少し、目を白黒されている。確かに、一定の年齢になると別の星へ、といった少し違う世界と、出発の戸惑いや決意、といういささか身に覚えのある感情との混淆は、不思議な感覚を織りなしていく。

      第三章。
      旅だちの集合場所、広場で。
      チエーロの姿を見つけると泣きそうな弟分の友だち、そして、昼は馬鹿みたいに遊んでたのに今はすっかり大人びてみえる友だち。それはわずか数時間しか経てない再会なのに。
      そして、その広場での、典雅な礼装を身にまとった子どもたちの喧騒。形而上に広めく煌き。

      おそらく心血を注がれた文章、はしかしさらっと端整である。時の流れに忠実に、けれどふとしたきっかけにすぱっと回想に入る。しばし。
      假奈代さんはハスキーに、熱に浮かされ突っぱしる。ライヴなドライヴ感。

      静謐な、時間。
      しっとり、そっと、息をひそめて、
      すでにとても大切な週一回のひとときになっていることに、突然、気づく。

      それも、いつ果てるとも ない。
      激しく静かに引き込まれていく。

  • 4月5日(月) 高石 聡
    • cocoroomをのぞいてみる。おそるおそる。

      初めてのBOOKS ARCHIVESの日。サイトの紹介ページを改めてみて(いくらか更新されてた)、でも行って聴いてみないとよくわからないし。最近とみに、謎な企画に弱くなって、心魅かれる私。

      客席の方へ。どきどき。少し落とされた照明。向かって右に大きなテーブルがあって、上田假奈代さん。が席についているのだけれど、それよりも何よりも、マイクとマイクスタンドが林立。10本くらい! はありそう。さらに、風除けフード? 要は黒くて丸いのが二枚、假奈代さんの右のほおと左のほおのすぐ前に。マイクは頭の上方からも二本、假奈代さんを目がけ…つつ微妙に左右に振りつつ。マイクに包まれて、いかつい。
      …本気で録音するんだ。。エーカゲンな居住まいを正す。
      ちょっと気圧されつつ、席につく。

      上田假奈代さん、挨拶と、この企画の説明と、そして朗読する本の紹介。お話ししつつ、考えつつ、また語りつつ、手探りな感触。表紙の絵や、裏表紙、本を初めて手にされたときのこと。著者である山口泉氏とお会いされた印象なども。繊細で静かな予感。『吹雪の星の子どもたち』という題名のごとく、地球ではない “吹雪の星” なので、一年が十三カ月あったり、月や曜日の呼び方が違ったり、重さや貨幣の単位も不思議。SF とはよびたくない重みを感じる。

      序詞、
      「生きる という言葉をつかわずに生き、…」
      するすると導かれる。ナビゲーターは上田假奈代。

      第一章。
      遊んでいた子供たちは、いつの間にやら別れ、少年は一人、橇を背負って家路についている。
      假奈代さんの声と場景が渾然一体となって目の前に広がり、包まれる。

      雪の、野原。
       静かな、空気。

      少年と少女。
      束の間の、邂逅。
      凍えた、小鳥。

      目を瞑り、時にながめ、みつめる。
      目の不自由な人の、目に惑わされない自由な世界を想う。

      不思議な、でもしっかりとした実体をもった、物語はここから、はじまる。

           *     *

      第一夜が終わって。フェスティバルゲート、4階。
      誘われるがままに、外に出て、ぐるっとまわって、見上げると月は、まあるい蛍光灯のように、どの照明より明るく白く照っていた。

  • 2月某日 BOOKS ARCHIVESレポート 高石 聡
    観念の王国 http://sst.gaiax.com/home/windswept
    • サイトで “BOOKS ARCHIVES” の概要を目にする。
      腹、くくったんだ、と思った。
      対談だとか、翻訳本の朗読 + パントマイムのコラボレーションだとか、そのきざしはみえていたのだけれど、ずうっと自己表現に御自分の詩を朗読してきたかたが、人の作品を朗読することの意味を考える。

      それは、他者の生を生きるということ? 新たな生を読みなおすということ?