生まれて、いちばん最初に読んだ絵本は、谷川俊太郎だ。
気にいって暗唱までできるようになった。
ウサギとカメが追いかけっこをして、月まで行ってしまう。
勝ったのは、鈍重だけれどあきらめないカメの方だった。
さて、日本一有名な詩人といえば、谷川さんだろう。
彼の詩集のなかでも、
このサイズはポケットに入るので、通勤通学におすすめである。
すこし分厚いけれど、この厚みがポケットを膨らませ、
青空を潜ませているような、そんな詩集。
処女詩集「20憶後年の孤独」から「62のソネット」、
「未完詩編」などが収録されているが、
なかでも「旅」シリーズの鳥羽を巡る紀行詩がいい。
彼は、いくつもの机で詩を書く。
「机を変えること、それが旅だ」と、
なにかのインタビューで答えているのを読んで、
さすが詩人だな、と思ったものだ。
あなたは机を変えて、旅をするか?
ラジヲのチャンネルを変えて、旅するか?
仕事を変えるか?引越しするか?恋人を変えるか?
いろんな旅のしかたを考えてみる。
変わらないようでいて、変わっている日々を旅している。
ポケットのなかの空を、指で触りながら。