■リンク7「希望のフェスティバルゲート」

石橋友美(生活保護受給者による紙芝居劇団「むすび」マネージャー)

わたしにとって、フェスティバルゲートは、今マネージャーをさせていただいている紙芝居劇むすびへの窓口だった。ココルームがあったからだ。むすびのおじさんたちとフェスティバルゲートに絵の具や画用紙を買いに来て、ついでにココルームに寄ってお茶を飲んだり、公演をさせてもらったり、目と鼻の先の西成から、ちょっとご近所にお出かけという感じで、わたしはここをむすびの第2のふるさとみたいだと思っている。フェスティバルゲートがなくなるかもしれない、と聞いて、抜け殻になった店舗の暗闇から「もったいない」という恨めしい悲鳴が聞こえてきそうだと思った。この奇抜な建物は、ここで行われるべき奇抜な発想を待っている。浪速区と西成区がぶつかる、この密度の濃い空間には 個人的にも好きな大阪プロレスもあるし、この街が好き!というニオイがぷんぷんしているのに。
フェスティバルゲートに行くと、流れ着いた旅人風のひとが、ひとり空を見上げている場面に出会う。このような人たちがホッと息をつけるような場所、むすびのおじさんたちのような隠居組がお出かけしてきて、若者とことばが交わせる場所があれば、お互いにいい刺激にもなると思う。ようするに、お金が根拠にならなくても豊かに過ごせる非営利な空間も街にはないといけないと思うのだ。街はどこも経済で目まぐるしく移ろっている。そしてそれに疲れた人が、立ち止まることもできずにはじき出されていく。その人たちが、リフレッシュできて、人と出会って、ビジネスや市民活動を思いついたり、また元気に出かけて行くようなロータリー的場所が必要だと思う。
ちなみに、むすびのおじさんに希望を聞いてみると、住民票発行とか住民サービスの窓口があったらなぁ、と言っていた。人がのんびりと集まるような場所があれば、もちろん紙芝居劇も披露できるだろう。フェスティバルゲートの行く末を語り合うこと=理想の街づくりを語りあうきっかけになっていることに気づく。もっとじっくりそのプロセスを楽しむ余裕があればよいのですが…。  

石橋友美(いしばし ともみ)
奈良県在住。05年よりNPO法人こえとことばとこころの部屋からディレクターとして紙芝居劇むすび(http://musubiproj.exblog.jp/)に派遣される。日々のマネージャー的業務とメンバーのサポートを担当。00年にオーストラリアでパーマカルチャー(持続可能なくらしの体系的デザイン)を学び、自然を根底に据えた視点から高齢者のもつ味わいや魅力を探る。そのかたわら、日本舞踊千扇流・千扇彩楓として活動を開始したところである。